2013年11月6日水曜日

特集! シマメイガコマユバチ 産卵

家で保管していた玄米米袋から無数のノシメマダラメイガの幼虫が抜け出し部屋のあちこちで蛹化。現時点で
300頭は掃除機で吸った。その数にくらべるとシマメイガコマユバチはぐっと少ない。小さい事もあり15頭ほど
見つけただけである。シマメイガコマユバチは以前にも記事にしていましたが産卵管の太さと卵の大きさが
違う等、疑問点があり、再度、ノシメコクガ幼虫を捕獲、シャーレーに入れコマユバチを放ち観察&撮影してみました。結果、衝撃!!の産卵場面を目撃出来ました。

今回の観察は次の2つのシャーレー及びガラス小瓶の中で行いました
A:ノシメコクガ幼虫 1頭(やや小さい) シマメイガコマユバチ1頭 
B:ノシメコクガ幼虫 3頭 シマメイガコマユバチ5頭
*どのグループか写真の下のコメントの末尾にABを付記します

追記:ezo-aphidさんよりコメントを頂き寄主によって麻酔をかける部分は決まっているようです。
それから考えますと、私が麻酔をかけていると思っている動画は麻酔のミスショットの可能性がありそうです。
カメラではなく肉眼で3頭ほど麻酔の場面を見ましたが腹部1〜5節辺りだったと記憶しています。

1:麻酔 〜寄主を仮死状態に〜

ハブの入った小さな檻にマングースを解き放つ。そんな状況を思い起こした。
10mmの幼虫に対してコマユバチは2mm。毒を塗った竹槍を持ってゾウに戦いを挑むようなものでしょうか。

シャーレーの中にコマユバチを放つ
ハチがノシメコクガ幼虫に気付くと腹部を折り曲げ毒針を刺そうと身構える B

接触しただけで暴れるノシメコクガ幼虫に麻酔をかけるのは
ハチにとってもリスクの高い行動と思う B


間合いを計るコマユバチ。毒針を刺すのは一瞬の出来事です B

写真としては全く駄目ですが麻酔の瞬間。1秒ほどでしょうか。あっという間 B

写真追加:腹部第3、第4節あたりに刺しているようです

何とか粘って撮影出来た麻酔の瞬間 A
小さなビンの中、よじ登って少し動きが止まった幼虫にブスリ。幼虫はポトリと落ちる
↑ 毒針を刺す場所が決まっているなら、この動画はミスショットかもしれません
他に確認した3頭はいずれも1枚上の写真でしめした場所辺りで行っていました

幼虫のバイタリティは凄い。常に動き回っています。
けれど麻酔を受けると約10分で静止していました A
(麻酔前の幼虫)

麻酔が効き仮死状態の幼虫。ハチは余裕で近づきます。次に起こす行動は↓ B

2:寄主体液摂取( Host-feeding )

朝露もなければ花も咲いていない室内だからでしょうか、麻酔後、真っ先にノシメコクガ幼虫の体液を
摂取する行動を開始します。コマユバチの Host-feedingを見るのは初めて。24時間はりついて観察した訳ではありませんが、ほとんどのハチが寄主体液摂を行っていました。
今までの他の寄生蜂の寄主体液摂取関連記事→こちら

麻酔のかかった幼虫に対して何度も見られる(1頭についても複数回)B

 私の観察している範囲では産卵管を深く刺す事はなく B

浅く刺し体を揺すって幼虫の体液が出るよう傷つけている A

寄生蜂は幼虫時代から寄主の体液を摂取しているので自然な行動なんですね B

体液摂取でスタミナをつけいよいよ↓ B

3:産卵 〜驚きのメカニズム!!〜



前回の記事では完全に勘違いをしておりました。それは シマメイガコマユバチは外部に卵を産みつける。という事。
また、幼虫に着いていた細長い卵は別の寄生蜂だと思っていましたがコマユバチ自身の卵でした。B
だとしたら、どこから卵が... これが眼から鱗でした!!!

え!産卵管の途中から風船?ガラス吹き?のように卵が出て来る! B

かなりの柔軟性と強度を備えた水の入った風船
それを細い管から外に押し出しているようなものでしょうか? B

1を見ると産卵管が縦に割れているのが分かります。また卵が出てくる場所は先端では無く途中からでした。
どうも卵の中には空気が入っているようで気泡が見られます
卵を一粒、出し切ると再び産卵管を上げ、少し出て来た卵の先端を蛾幼虫の体皮に着け
針を器用に動かしながら卵を出し切っています B
一粒10〜15秒ほどで産みつける。卵の長さ約0.6mm

器用に産卵管を動かし産みつける。何度見ても不思議です
このハチの産卵を見て確信しました A
内部に卵を産みつける寄生蜂も寄主体内で卵が膨らんでいる!
髪の毛ほどの細さの産卵管の中を卵が通るのは不思議でしたが、この方法なら合点出来ます

4:産卵 〜問題行動〜


私が観察した範囲では産卵場所は、ほとんど幼虫の腹面で行われた。産みつけられた卵の安全性を考えると理にかなっている。

10月25日の最初の観察では幼虫とハチを1頭ずつをシャーレに入れた結果、5頭の幼虫が孵化した。幼虫の大きさにもよりますが米袋についた繭の数をみると幼虫1頭つき卵3〜5頭くらい。

ちなみにAのシャーレーは幼虫が小さい為か卵2個だけでした。では3頭の幼虫に対して5頭のコマユバチのBのシャーレーの幼虫に産みつけられた卵は...

なんと!!産みつけられた卵が次々と潰されていく! B

たまたま産卵場所に卵があって偶然、潰れたり除いたりしていると思いましたが
撮影後の写真を見ると産卵行動とは違い先に産みつけられた卵を明らかに邪魔者扱いしています B


先に産みつけられた卵はことごとく潰された
自身の種を残す為には他の卵は不必要という本能がこの小さな2mmほどの
ハチに備わっているのかどうか分かりませんが
このハチは産卵前に他のハチの卵を潰し排除する行動をしました B

そして隈無く卵を潰した後、ちゃっかり3個の卵を産みつけていました B
以上、10月27〜31日撮影 自宅


あとがき

今回、家の中でノシメマダラメイガが大量発生するという困った状況が起りましたがネタ的には大漁でした(^^;;


特に産卵管脇から風船のように出て来る卵は衝撃で、体長1mm以下の寄生蜂の産卵管を通る卵の謎も解けたような気がします。(実際はどうか分かりませんが)

もう1点は他のハチが産みつけた卵を排除する行動です。盛んに蛾幼虫の腹面に産卵管を伸ばし動かす、でも卵は一向に産みつけられていない。カメラのファインダーでは何をやっているのか、さっぱり分かりませんでした。しかし現像した写真を見てビックリ!偶然ではなく故意的に卵を潰している姿がそこにありました。本能だとしたら凄い事です。

 いつになるか分かりませんがシマメイガコマユバチの記事はあと1回、予定しています。

8 件のコメント:

  1. こ・これはー、驚きの動画映像です! あの細い産卵管で、巨大な卵をどうやって産むのか、ようやく判りました。 これらを写すには相当な忍耐を要したことと思います(ご苦労さまでした)。
    幼虫を麻酔させるための一撃部位は、寄主によって決まっているはずですが、幼虫の場合、胸部(腹面?)の第1節と第2節の境目あたり、なんでしょうか。Host feeding は、たんぱく質が狙いだと思ってるのですが、産卵時の完成卵には関わりは無いので、栄養ドリンクなんでしょうねー。おのれの遺伝子を有利に残すという「競争」は、あちこちの生物種で見られてますね。

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    1. ありがとうございますm(_ _)m
      産卵ですが、通常だと隠れて見えないのですがシャーレーの中だったので何とか捉える事が出来ました。

      麻酔を打つ場所が決まっているのなら、麻酔を打っていると思っている動画は違っています。幼虫のリアクションから、てっきり麻酔を打ち込まれたと思っていましたが。席を外した隙に打ち直していたかもしれません。他に見た3頭は背に乗って毒針を射込んでいました。引いた写真を1枚追加しましたので、ご確認下さい。残念ながら幼虫はタマ切れで撮影のチャンスは無くなりました。

      やはり遺伝子を残す「競争」でしたか。小さくても侮れない存在ですね。

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  2. 画像の追加をありがとうございます。
    幼虫の神経節の位置を「カイコ幼虫の内部形態」で調べてみると、各体節の中央腹面の浅い所に、ほぼ同サイズの神経節があります。(ファーブルさんの記述を読むと)狩り蜂の獲物がゾウムシ成虫などの場合、胸部に大きな神経節が接近してあるため、ここを数回アタックすることで短時間のうちに麻酔できるようです。
    それに対して、蛾類幼虫では脚の数も多いので、(おそらく)胸部だけの攻撃では動きを止められないように思われます。毒液?が働くのかもしれません。判らないことが、つぎつぎ出てきますねー。深追いすると眠れなくなりますので、そこそこに。
     

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    1. お手数かけました。色々と情報有り難うございます。カイコの解剖写真には驚きました。

      きっちりと全ての幼虫が動かなくなる時間を計測すればよかったのですが動かなくなるまで時間の差は結構ありました。しかし10分以上動いている個体はいませんでした。また、直ぐに動かない個体もありました。的確に毒針がヒットしたか、しなかったかの差でしょうか。もう2度と米に湧かないでもらいたいですが、もう1度、観察してみたいですね。

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  3. まさに衝撃の映像ですね。
    卵がこんな場所から出てくるなんて想像もしませんでした。他の多くの寄生蜂ではどうなっているのか、興味津々ですね。競合する他の雌の卵を排除する行動も話には聞いていましたが、ほんとに徹底的にやるんですね。厳しい世界だと思います。
    ファーブルさんの狩り蜂では、芋虫の各体節にある神経節に順々に針を刺して行くという観察もありましたが、この場合は寄主が比較的小型なので一ヶ所の麻酔で事足りるということでしょうか。
    それにしても動き回る小さな蜂を相手に決定的な場面を余さず捉えられている、その技量と集中力に脱帽です。

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    1. こんばんは。
      私的には尖った産卵管をプスリと寄主に刺して先端からプツプツ丸い卵を送り出すイメージがありましたが、”事実は小説より奇なり”でした。見る事は出来ませんが内部寄生のハチの産卵も知りたい所です。
      麻酔は私が見ている範囲では1回のみでした。また今回のコマユバチ達は、なかなか賢く完全に幼虫が静止するまでは全く近づきませんでした。
      なんとか産卵の連続写真を撮りたくて涙をぼろぼろ流しながらファインダーをのぞき続け(自分で馬鹿だな〜と思いながら)撮影した甲斐がありました(^^;;

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  4. 出遅れてしまいましたが、いや~、驚きの映像ですね。
    私も、前々から寄生バチの産卵科の細さに、どうやって卵が出てくるのか不思議でしたが、今回の映像を見て納得できました。多分、他のハチたちも似たような産卵をするのでしょうね。
    最近は、あまり面白みのある写真が自分では撮れていないので、余計に感激してしまいました。おまけに、玄米30kgの威力の凄さにも感激です(^^)。

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    1. こんばんは。
      玄米30kgの元は取れていないかもしれませんが(^^;; ひと袋パーになってしまった悔しさは無くなりました。(しかし、未だに部屋のどこかで羽化して出て来る蛾を吸っています)
      ありがたいことにネタとしてはもう一つ先になりますがコマユバチの孵化から羽化までが上手くいけば記事に出来そうなので、お待ち下さい(^^

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